PADI オープン・ウォーター・ダイバーでも学習する『減圧症(潜水病)』
Cカード(ダイビングライセンス)を取得しようと考えたことがある方は、なんとなく聞いたことがある言葉だと思います。
減圧症とはダイバー特有の病気です。スクーバ・ダイビングを楽しむ上で注意が必要です!
減圧症はしっかりとした対策を行えば防ぐことができるため、過度に恐れる必要はありません。
今回はこの『減圧症』について少しお話していこうと思います。
目次
減圧症について知っておこう!
減圧症とは減圧障害の一種で、減圧によって体内にある窒素ガスなどの生理的に不活性なガスが過飽和(血液中にこれ以上溶けきれない)の状態となり、その気泡が組織内や血管内に形成され引き起こされる障害です。
空気は主に『窒素(79%)』と『酸素(21%)』から成り立っています。高圧下では空気は圧縮されるため、水中で吸った空気は水面で吸う空気に比べより多くの分子を含んでいます。人間の体は常に酸素を消費しているため、高圧下で過剰な酸素分子を吸い込んでも、それが血液中に蓄積されることはまずありません。
しかし人間の体内で消費することが無い過剰な窒素分子は、血液や組織に蓄積してしまいます。
つまり、『減圧症は、高圧環境下で血液や組織中に溶けていた窒素が、減圧に伴い気泡をつくる状態。』
よくある例えとしては、炭酸飲料が入った缶やペットボトルを開封する際に「プシュー」という音と共にガスが抜け、同時に炭酸飲料水の中に気泡が発生し始めます。これとよく似たことが体内を流れる血液の中で起こります。
減圧症の症状
減圧症は通常ゆっくりと発症します。水面に上がって1時間以内に減圧症を発症する人は半分程度ですが、6時間後までには90%が発症します。まれに、浮上して24~48時間経過してから、特に潜水後の高所曝露(飛行機での旅行など)により。症状が出現することがある。症状は徐々に現れて、最もひどくなるまでに時間がかかります。最初の症状として以下のものがみられる可能性があります。
一般に減圧症には「Ⅰ型」と「Ⅱ型」の2つの型があります。
I型 | 関節,皮膚,およびリンパ管が侵され,比較的軽症で,典型的には生命が脅かされることはない。 |
II型 | 重篤で,ときに生命が脅かされ,様々な器官系が侵される。 |
脊髄は特に侵されやすい;その他に侵されやすい部位には,脳,呼吸器系(例,肺塞栓),および循環器系(例,心不全,心原性ショック)などがある。
ベンズは減圧症による局所的な関節または筋肉の疼痛を指すが,しばしば本疾患のどんな要素についても同義的に用いられる。
治療
『100%酸素の投与』や『再圧治療』で約80%の患者が完全に回復する。
最初に、高流量100%酸素を投与すると、肺と体循環の間の窒素分圧較差が拡がることにより窒素のウォッシュアウト(薬物が時間経過と共に体内から無くなること)が促進され、塞栓した気泡の再吸収が加速する。
重度の潜水病であることが危惧される場合は、再圧チャンバーによる再圧治療が必要になります。
再圧チャンバーによる再圧治療はダイビング後48時間以内であれば有益です。
治療開始までの時間と障害の重症度が転帰を決定する重要な因子となります。治療が大幅に遅れると、永続的な障害が残るリスクが高くなります。不要な処置を行って搬送を遅らせないことが重要です。
搬送を待つ間や搬送中は、フェイスマスクをぴったりと装着させて酸素を吸入し、口や静脈から水分の補給を行います。
¥66,000(税別)
予防
減圧症の予防の主なポイントは、『浮上スピード』と『潜水時間』の2つです。
急激な水圧の変化に気を付ければ減圧症になることはありません。また、潜水時間が短ければ窒素の蓄積を抑えられるので、減圧症の発症リスクを下げられます。
減圧症を発症する原因の大部分は、浮上スピードが速すぎることにあるので、浮上のテンポには細心の注意を払いましょう。
ダイビングの規則では、1分間に18m以上の上昇は避けるべきとしています。1分間に18mとは大体自分のはいた呼吸の泡を追い越さないスピードです。
1分間に10m程度の上昇スピードだと、毎分18mのときよりも窒素の気泡の量は減りますが、毎分3m以下と浮上スピードが遅すぎると、逆に気泡の量が増えてしまいます。適度なスピードを心掛けましょう。
初心者の方は、インストラクターよりも速く浮上しないよう気を付けましょう。
潜水の深さまたは持続時間を、浮上時の減圧停止を必要としない範囲減圧不要限界(NDL)に制限することも有効です。また、公開ガイドラインの記載通りに減圧停止しながら浮上することにより、顕著な気泡形成は通常予防できます。
今では多くのダイバーが、水深または潜水時間を常にトラックして減圧スケジュールを計算する携帯型のダイブコンピュータを装着しています。
公開ガイドラインまたはコンピュータに指示されたガイドラインを遵守することに加え,多くのダイバーが水面下4.6m(15フィート)当たりで数分間の安全停止を行う事で、減圧症のリスクを軽減させています。